電力節約のマメ知識

2017年03月29日

太陽光発電は何年で元がとれるの?

電気

えっ、そんな会社も、と思わず目を見開いてしまうような大企業までが続々と参入を表明している太陽光発電事業。これからのエネルギーを考える上でますますの発展が見込まれる発電法なのは間違いないのですが、ちょっと待って。立派な企業が事業として取り組んでいるから安心だろうと軽い気持ちで申込む前に、減価償却プランを立てることが大切です。

◆太陽光発電の第一歩はきちんと見積もりを出すこと

東日本大震災以降、多くの方が改めてクリーンエネルギーとしてご自宅での太陽光発電に着目されたことでしょう。自宅で発電した電気で普段の生活を行い、余った電気を売る事でお小遣いになるならと、ソーラーパネル設置を検討された方も多いはず。

とはいえ、いざ設置となるとかなりの金額がかかります。「一般社団法人 太陽光発電協会」の試算を参考にすると、仮に4kWhの発電設備を自宅に設置する場合、平均174万円もかかるそうです。

もちろんこれは平均ですので設置環境によって金額は大きく異なります。まず自宅の屋根が南向きかどうか。太陽は常に南側をまわりますので、当然発電効率をあげるためソーラーパネルは南向きに設置することとなります。なので、南向きの屋根が広いと無理な工事が減り設置費用が安くなります。

次に、屋根の傾斜です。ソーラーパネルは太陽光に対してなるべく直角に近い角度で設置する必要があります。傾斜が少ない屋根では、コンクリートの基礎やフレームを設置し角度をつける必要があり、その分、工事費が余分にかかってしまうのです。

瓦屋根でしたら瓦を一度すべて剥がしてからの工事となりますので、さらに予算は跳ね上がります。

工事にかかる人件費なども業者によってまちまちですので、少しでもお得にソーラーパネルを設置しようと考えるなら設置の前に複数社から見積もりをとっておくことが必須となります。

◆ただ安ければいいものではない、見積もりの落とし穴

複数社で見積もりをとって比較すると、驚くほど価格に差が出てくることでしょう。だからといってここで、すぐに値段の安い業者へ工事を発注してはいけません。

太陽光発電の見積もりで大きな差となってくるのが「kW単価」という考え方です。これは、1kWを発電するのにいくらかかるかという概算です。

例えば、見積もりで総工事費が150万円だったA社と180万円だったB社があったとします。一見、30万円も安いならとA社にお願いしたくなりますが、見積書の『容量』と書かれた項目に注目してみましょう。

するとA社は3kW、B社には4kWとかかれていました。

これは、A社が設置するソーラーパネルは3kW、B社が設置するソーラーパネルは4kWが最大発電量であることを示しています。

ここで「kW単価」を出してみましょう。

・A社:150万円÷3kW=50万円
・B社:180万円÷4kW=45万円

1kWを発電することを考えるとB社の方が5万円安くなりました。

一世帯あたりの年間発電量は出力1kWあたり約1,000kWです。一世帯あたりの年間総電力消費量は約5315kWh/年(エネルギー・経済統計要覧2014年版より産出)です。蓄電池の技術はどんどん発達していますが、実際には発電した電気をすべて蓄電して消費することはできません。ですが、1年の総電力消費量の約20%分もの電力を5万円で買えると考えると、1kWの容量差がいかに大きいかがわかります。

ソーラーパネルは長期間使用してはじめて恩恵を受ける事ができます。設置見積もりを比較する際はかならず「kWh単価」の差に着目しましょう。

◆ソーラーパネル設置前に、何年で元が取れるか計算してみよう

さて総務省の発表している家計調査によると、2人以上で生活する一世帯当たりの電気代は2016年で月平均10,100円、年平均121,200円となっています。

一般社団法人 省エネルギーセンターの「エネルギー・経済統計要覧2014年版」をもとに試算しますと4kW容量のソーラーパネルを設置すれば年間75%分の電力を太陽光発電で賄えるそうです。

単純に電気料金支出額から考えると、年90,900円の電気料金は太陽光発電のみで賄えることになり

174万円(総工事費の平均)÷90,900円(2016年の年間電気代平均)=19.1419円

約19年で電気代だけでも元は取れる計算となります。

実際の原価償却期間はさらに短くなります。自治体ごとのソーラーパネル設置に対する補助金制度を活用する方法など、設置費そのものを安く手段もありますし、何より大きいのは、東日本大震災以降設定された余剰電力の10年間固定価格買い取り制度です。

これは、一般家庭が太陽光発電で得た余剰電力を、通常の価格よりもかなり割高で電力会社が買い取ってくれる制度で、2017年現在は28円/1kWhです。先にも少し述べましたが、蓄電が難しい電気の性質上、どうしても余剰電力は発生します。

その量は、総発電量のなんと60%と言われており、4kWhのソーラーパネルで年4,000kWh発電したとすると、2400kWhもの電力を今後10年間は38円/1kWhで販売することができるのです!

金額に直すと年間91,200円!この額も加えて減価償却期間を計算しなおして見ると

174万円(総工事費の平均)÷(90,900円+91,200円)=9.555……

メンテナンス費用等を考えても、およそ10年もあれば元が取れる計算になります。

逆に言うならば、固定価格買い取り制度が現状保証されているのが10年までなので、この10年をひとつの目安にして、元が取れるかどうかを考えておかなければ損をしてしまう可能性もあります。ソーラーパネルはまた、4年に一度メンテナンスが必要になってきますのでその都度コストがかかりますし、パネルの故障や寿命を迎えてしまう可能性は回収が長引けば長引くほど高まってしまうのですから。

細かい事ですが、太陽光発電では昼に発電した電気を蓄電し夜を過ごしますので、昼に電気をたくさん使う家庭では、減価償却期間が長引き元を取れない可能性があがります。また、2017年度よりも、2018年度。2018年度よりも2019年度と固定価格買い取り額が下がっていく事が決まっているので今後は償却にかかる時間は長引くことでしょう。

ソーラーパネルの設置は長いスパンでのコスト回収となります。設置業者とも一生ものの付き合いとなることを考えながら、まずは見積もりをお願いしてみてはいかがでしょうか。