電力節約のマメ知識

2017年04月28日

次世代ディスプレイ搭載機として注目の「有機ELテレビ」は液晶テレビと何が違う?

電気

薄型テレビといえば、まっ先に思いつくのは液晶テレビだと思いますが、最近では「有機ELテレビ」という製品を見かける機会も多いと思います。実際のところ、液晶テレビと有機ELテレビは何が違うか知っていますか?

◆有機ELが薄型テレビに新風を吹き込む

薄型テレビとひとくくりにして呼ばれてはいますが、映像の表示方法の違いで分類され、商品として購入できるものには「プラズマ」「液晶」「有機EL」などがあります。

近年の主流は大画面でありながら、比較的お手頃な値段で購入できる液晶テレビですが、2017年は有機ELテレビに注目が集まってきています。

というのも、2017年初めに米・ラスベガスで開催された「CES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー) 2017」で、パナソニックやソニーなど多くのメーカーが有機ELテレビの製品発表を行ったほか、東芝からは現在、4K対応の有機ELテレビ「REGZA X910」シリーズが発売されています。

有機ELはスマホやデジカメなどにも使われており、実はそれほど珍しくはないのですが、テレビのように大画面のものが発売されることが、これまでとは大きく変わってきたところです。

◆有機ELとは?

そもそも有機ELとは、「有機エレクトロルミネッセンス」(Organic Electro Luminescence)の略で、特定の有機化合物に電圧を加えると熱をあまり発さずに発光する現象のことをいいます。

日本では有機ELと呼びますが、世界では「OLED(オーレッドまたはオーエルイーディー)」(Organic Light Emitting Diodeの略)という呼び方が一般的で、有機EL現象を応用した発光ダイオードの一種です。

有機ELとOLEDは突き詰めるとニュアンスが違いますが、OLEDを利用したテレビなどでは同じものを指す言葉として使われていますので、ユーザーとしてはあまり気にする必要はありません。

◆有機ELの特徴は薄さとコントラストと応答速度

では液晶テレビと有機ELテレビ、両者の違いは何でしょうか?

・違い1:映像を映し出す仕組み
液晶の場合、白色のバックライトが光源となって表面にあるカラーフィルターを通じて色を乗せて映像を映し出すのに対し、有機ELはディスプレイ自体が発光して光量を調整して画面を映し出します。

・違い2:応答速度
有機ELは液晶に比べて、応答速度が速いことがメリットのひとつです。電圧をかけた瞬間に発光する有機ELディスプレイは、光の輝度も電圧を調整した瞬間に変化するため、瞬く間に映像が切り替えられます。

一方、液晶は電圧を加えてから映像が変化するまで時間がかかり、あまりにも動きが速い映像などでは画像がぶれるケースも。

・違い3:ディスプレイの薄さ
バックライトを必要としない有機ELは、必要とする液晶に比べて、物理的にディスプレイを薄くすることが可能です。有機ELディスプレイの中には、厚さ5�o程度というかなり薄い製品も見かけられます。また、有機ELは薄いだけでなく、ディスプレイを曲げられるという特徴もあります。

・違い4:黒色の再現度
液晶では黒を表現する際でもバックライトが光った状態のため、光漏れが起きやすく完全な黒にはなりにくいですが、ピクセル単位で発光調整できる有機ELは、光っていない“本当の黒”を再現できると言われています。このことから、コントラスト比も圧倒的に有機ELが勝っています。

・違い5:視野角が広い
技術の進歩とともに液晶テレビの視野角も改善されてきていますが、有機ELと比較すると、まだまだ液晶は見る角度で色調が変わってしまう場合も多いです。有機ELの視野角は180度ともいわれ、極端にいうと画面が見える範囲内なら、どの角度からでも映像を楽しめることになります。

・違い6:省エネ性
ディスプレイ自体が光り光源を必要としないという有機ELの構造は、消費電力を抑える効果にも一役買っています。理論上、液晶テレビに必要な消費電力の10%程度の電力しか使わないとも言われています。

◆優秀な性能を持つ有機ELの現状の課題は?

基本的な部分での違いを比較してみましたが、これだけ魅力的な有機ELであっても、課題はいくつかあります。

その最たるものが価格です。コストパフォーマンスを考えると、これはもう圧倒的に液晶の方が有利です。有機ELテレビの本格的な販売は始まったばかりなので、まだまだ単純に高価なものです。

プラズマテレビや大画面液晶テレビが登場した当時のことを思い返せば、ピンとくるのではないでしょうか。

ということはニーズが高まっていき大量生産が可能になれば、現在の液晶テレビのようにだんだんと価格帯が下がってくることも期待できるはずです。

もうひとつは、ディスプレイの寿命が液晶に比べて有機ELの方が短いとされている点です。その理由はメリットでもある、ディスプレイ自体が発光することが、使用期限を短くしている原因では……と考えられています。

そうはいっても、日常的に使うレベルでは液晶とそう体感の差はないとされているので、あまり気にしなくてもいいのかもしれません。

有機ELと液晶。どちらがいいかという質問に対して、実物を見比べたりコスト感を考慮しながら、好みとマッチするものを探してみることをおすすめします。

選択肢が新たに加わり、高画質化もいまよりも進化するとなると、テレビの技術の進化にいっそうの期待が高まります。